世界遺産に登録されるものは、以下の10項目の登録基準のうちのどれかが適用されている必要があります。
登録基準(ⅰ):人類の創造的資質を示す遺産
登録基準(ⅱ):文化交流を証明する遺産
登録基準(ⅲ):文明や時代の証拠を示す遺産
登録基準(ⅳ):建築技術や科学技術の発展を証明する遺産
登録基準(ⅴ):独自の伝統的集落や、人類と環境の交流を示す遺産
登録基準(ⅵ):人類の歴史上の出来事や伝統、宗教、芸術と関係する遺産
登録基準(ⅶ):自然美や景観美、独特な自然現象を示す遺産
登録基準(ⅷ):地球の歴史の主要段階を証明する遺産
登録基準(ⅸ):動植物の進化や発展の過程、独自の生態系を示す遺産
登録基準(ⅹ):絶滅危惧種の生息域で、生物多様性を示す遺産
文化遺産の登録基準は(ⅰ)~(ⅵ)、自然遺産の登録基準は(ⅶ)~(ⅹ)です。
そして両方の登録基準にまたがるものは、複合遺産となります。
- 複合資産について
日本にある世界遺産には複合遺産は無いようですが、世界には下記のような複合遺産があります。
※2級の出題範囲のものを書いております。
★トンガリロ国立公園(ニュージーランド)
文化遺産→ニュージーランドの先住民マオリとの文化的なつながり
自然遺産→キウイをはじめ60種以上の鳥類の楽園
★マロティ‐ドラーケンスベルグ公園(南アフリカ共和国及びレソト王国)
文化遺産→一帯の洞窟にはサン族が4,000年にわたり描いた壁画が数多く残されている
自然遺産→ケープハゲワシやコイ科の固有種など豊かな生態系が見られる
★バンディアガラの断崖(マリ共和国)
文化遺産→ドゴン族がこの地に移り住み、独特な集落を形成していったとされる
自然遺産→標高差が500mもある断崖が約200kmにもわたってつづく
★パパハナウモクアケア(アメリカ合衆国)
文化遺産→ニホアとマクマナマナという2つの島には、西欧化以前の定住地が残る
自然遺産→世界最大級の海洋保護区
★メテオラの修道院群(ギリシャ共和国)
文化遺産→ギリシャ正教の美術の宝庫(メタモルフォシス修道院、クレタ様式のフレスコ画、イオンなど)
自然遺産→約20~400mの尖塔状の岩塊の頂上に修道院がある
★黄山(中華人民共和国)
文化遺産→道教および仏教の聖地、伝説の王である黄帝が仙人となった場所
自然遺産→黄山四絶、固有種の黄山松、数多くの絶滅危惧種の生息域
★カカドゥ国立公園(オーストラリア連邦)
文化遺産→アボリジニの文化(X線画法、ウビル・ロック)
自然遺産→オーストラリア最大の国立公園
★タッシリ・ナジェール(アルジェリア民主人民共和国)
文化遺産→紀元前8000年頃から描かれた岩絵約2万点が残る。
自然遺産→浸食作用によってつくられた「岩の森」、荒々しい景観
★ウィランドラ湖地域(オーストラリア連邦)
文化遺産→ホモ・サピエンス・サピエンスの骨が発見される、アボリジニが残した岩面画もある
自然遺産→約2万年前に干上がった湖の跡地
★マチュ・ピチュ(ペルー共和国)
文化遺産→インカ帝国時代の都市遺跡(一枚岩のインティワタナなど)
自然遺産→アンデスイワドリなどが生息する自然環境
★ティカル国立公園(グアテマラ共和国)
文化遺産→マヤ文明最大の神殿都市遺跡(ア・カカウ王の墓など)
自然遺産→周辺の森林や生態系
★サーメ人地域(スウェーデン王国)
文化遺産→サーメ人の生活文化(トナカイの放牧)
自然遺産→氷河がつくり上げた独特の自然景観、希少な野生動物の生息地
★ピマチオウィン・アキ(カナダ)
文化遺産→アニシナアベ族の4つの共同体が伝統的な狩猟採集生活を送る
自然遺産→カナダ先住民の言葉で「生命を与える大地」を意味する
★ンゴロンゴロ自然保護区(タンザニア連合共和国)
文化遺産→オルドゥヴァイ渓谷で人類の化石が発見された、マサイ族の狩猟・放牧兼保護区
自然遺産→「世界の動物園」、絶滅危惧種を含めた約2万5,000頭の動物が生息する
★タスマニア原草地帯(オーストラリア連邦)
文化遺産→先住民タスマニア・アボリジニがステンシルという技法を用いて描いた岩面画
自然遺産→氷河地形、ゴンドワナ大陸の一部だったと考えられる、固有の哺乳類が生息
- 負の遺産について
戦争や紛争、人種差別や奴隷貿易など、人類が歴史上犯してきた過ちを記憶にとどめ繰り返さないよう教訓とするための遺産です。
特徴として、登録基準(ⅵ)のみで登録されることがあるということが挙げられます。
世界遺産条約で「これが負の遺産です」と定義されているようではないですが、公式テキストによると、日本を含め世界には下記が負の遺産とされております。
※2級の出題範囲のものを書いております。
★広島平和記念碑(原爆ドーム)(日本、広島県)
・人類史上初の原子爆弾投下
★ゴレ島(セネガル共和国)
・黒人奴隷を主要商品のひとつにした三角貿易の拠点
★オーストリアの囚人収容所遺跡群(オーストラリア連邦)
・先住民であるアボリジニは居住地を追われた
・囚人の労働力を利用した植民地拡大政策
★モスタル旧市街の石橋と周辺(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
・民族紛争で「スターリ・モスト」が崩落、紛争終了後に再建され、民族和解の象徴となる
★アウシュヴィッツ・ビルケナウ:ナチス・ドイツの強制絶滅収容所(1940-1945)(ポーランド共和国)
・ナチス・ドイツによるホロコースト
★ビキニ環礁‐核実験場となった海(マーシャル諸島共和国)
・核実験が実行された、ブラボー・クレーターが残る、第五福竜丸も被爆
★バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群(アフガニスタン・イスラム共和国)
・2001年、タリバン政権に磨崖仏が破壊され、石窟内の壁画も8割が消失
★円形都市ハトラ(イラク共和国)
・IS(イスラム国)により破壊される
★クンタ・キンテ島と関連遺跡群(ガンビア共和国)
・ゴレ島と並ぶ奴隷貿易の重要拠点(『ルーツ』アレックス・ヘイリー著)
参考資料: